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「ねぇねぇ~、カラオケ行こうよ?」
「いいね、行く行く!」
「お好み焼き食べて帰らね?」
「あたしも食べたぁい!」
HRも終わると、教室の中は帰り支度をするクラスメイト達のざわめきで一気に騒がしくなった。
今日会ったばかりなのに、みんな昔からの友達のように誘い誘われている。
羨ましい―――
だけど不思議とあたしと目の合う人はなく、自分の居場所のない、一人居心地の悪い教室を後にした。
あたしにも、友達出来るのかな。
そんな弱音で胸がいっぱいになる。
昨日までは今日という日が、不安と期待でいっぱいだった。
新しい環境。
新しい友達。
人見知りながらも、いろいろな出会いを期待していた。
自分からは話しかけられなくても誰か話しかけてくれるかもしれない、なんて他人任せだけど期待していた。
だけど現実はそんなに甘くはなく、今のあたしには不安しかなかった。
明日も友達出来なかったらどうしようとか、今日みたいな日が三年も続くの?とか。
とにかくネガティブになっていた。
「佐藤さん!」
教室を出てすぐあたしの名前を呼ぶ声がした。
誰?
佐藤って在り来りな名前だし、もしかしたらあたしと違う「佐藤さん」を呼んでるのかもしれない。
でも―――
戸惑いながら恐る恐る振り返ると、教室から半分だけ体を出して手を振っている藤崎君がいた。
あたしが呼ばれたんだ。
ごく普通のことなのにすごく嬉しかった。
あたしを見てくれてる人がいる。
あたしは透明人間じゃないんだ。
半分冗談だけど半分本気。
ここまで誰とも言葉を交わさないと、あたしのことが見えてないんじゃないかと不安にもなる。
「これから飯食いに行くんだけど、一緒に行かない?」
「えっ?」
突然の誘いに驚いたのは言うまでもなく、あたしは返答に困ってしまった。
だって男子とランチするなんて今までなかったことだから。
「女子もいるからおいでよ」
藤崎君はあたしの胸のうちが読めたのか、笑いながらもう一度誘ってくれた。
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