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入学式から一週間が経った。
学校にはようやく慣れてきたけど、今だに藤崎君が気にかけてくれる理由がわからずにいる。
気にする程のことじゃないかもしれない。
けど藤崎君のことばかり考えている。
彼のおかげで友達が出来たのは事実だし、もしも彼が話かけてくれなかったら友達は出来なかったと思う。
だから気にかけてしまうの。
何故あたしに優しくしてくれるのか。
誰も気にかけてくれないのに―――
「春花ぁぁ!」
一人で学校に続く坂道を登っていると、あたしを呼ぶ語尾の少し上がった声が後ろから聞こえてきた。
この声は菜穂ちゃんだ。
振り返ると、岡本君と登校している菜穂ちゃんがいる。
彼女は目が合うと、手を振りながらあたしの前まで全力疾走で駆け寄ってきた。
「おはよ」
会話をする時、あたしは相変わらず顔を赤くしてしまう。
でもこればかりは自分ではどうしようも出来ない。
「あはっ。今日も春花可愛い!」
菜穂ちゃんはいつもこんな感じであたしをからかう。
でも菜穂ちゃんの思惑通り、あたしは菜穂ちゃんの言葉に更に耳まで真っ赤になる。
「あんまり春っちをからかうなよ」
岡本君は追い付いた菜穂ちゃんの頭をぺちっと軽く叩き、あたしに顔を向けた。
「おはよ!」
「……おはよ」
「春花も一緒に行こう!」
菜穂ちゃんは岡本君の言葉を無視してあたしの手を取ると、昨日見たテレビの話をしながら歩き出した。
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