小鳥の歌声

第一章 セレブっぽい女性

僕は耐えきれず、叫んだ。

「今は助かることだけ考えろよ！」

そこで、細い裏道に入り込むと、女性は明らかに躊躇いの表情を顔に張り付けた。

「ちょっと、どうしてこんな細い路地に入るのよ!? 行き止まりだったらどうするの？ まさか、あ、あんたもあの男とグルなんじゃないでしょうね……!?」

さすがに、その言葉にはカチンときた。せっかく親切心で助けてやってるのに、そこまで言われる筋合いはない。

僕はセレブっぽい女性の手首を放して、立ち止まった。彼女は勢い余ってよろけたが、何とか踏みとどまる。

「そんな風に言うんだったら、あとは好きにしろよ。そこの道を出て右側に行けば交番がある。僕の言葉を信じないのなら、ここで引き返してあいつに刺されればいい」

セレブっぽい女性は、一瞬迷ったが、背後からの足音を聞いて、慌てるように(というより慌てて)大通りの方へと駆けて行った。

僕もそれに続こうとした。

間に合わなかった。