間章 友人A

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しかし僕には、周囲を飛び交う雑音や思考に混じって、彼の思考が聞こえていた。それは、とても低い響きで、腹の底を震わすような声色だった。 『こいつ、絶対カンニングでもしてたに決まってる……じゃないとあんなに偏差値が高い学校に入れるわけない! 皆が必死で勉強してるときも余裕こいてやがったし、もしかして裏口入学でもしたんじゃねえの? 本当、根暗で無口で、気持ち悪い上に頭にくんだよ!』 内心でこれだけ恨み言を考えながらも笑顔は絶やさない彼に、僕はある意味で尊敬の念を覚えた。自分がボロクソに思われていることに対しては別に感じることもなかった。 もちろん、そう思われるのが好きなわけではないが、こんなことは慣れっこだ。この程度の思考は学校中に充満していた。 不意に彼が、僕の過去について触れてきた。 「そういえば前から聞きたかったんだけど、吉原って今、叔父さんの家に住んでるんだろ? 両親はどうしたの?」 この攻撃には、さすがに胸を刺された。彼は僕の身に起こった事件を知っていながら、傷口を抉るためにわざと知らないふりをしているのだ。 「噂になってたはずだけど……知らないの?」 静かにそういうと、彼は本当に知らない、と言うような表情をした。役者に向いてるんじゃないのかと思った。 そして僕は、自らの過去に思いを馳せた。  
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