第二章 僕の過去

2/20
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
自分が周囲の人とは違うのだと自覚したのは、小学校に入って間もない頃だった。 それ以前は、自分が特別だという意識はまるでなかった。 記憶にある限り、幼稚園の頃には既に『凄く勘の鋭い子』という風に周囲の大人には言われていた。 ただ、両親に「嘘は必ずバレる」としつけられていたため、自分が他人の嘘を見抜けるのは当たり前で、他の人も同じなのだと思っていた。 きっかけは、小学校に入ってから覚えた『ババ抜き』だった。 友達にババ抜きのルールを教わった時、僕はすごく奇妙なゲームだと思った。 最後にババを持っている人間が敗けなのだとしたら、勝敗はカードを配られた時に決してしまうではないか。 次の人の思考を読み取るだけで、誰だってババを回避できるのだから、ゲームとして成り立たないのではないかと思っていた。 ところが、いざやってみると、ババを持っているのが誰なのか、他の誰も気付かない。必死になって、『これはババか?』なんて考えながら他の人からカードを抜く姿が、とても滑稽に見えた。 そして、ババ抜き名人と言われるようになって初めて、自分以外の人間は思考を読み取る力を持っていないのだと気付いたのだった。    
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!