第一章 セレブっぽい女性

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一、二、三、…… なんだよ、どいつもこいつも懐が淋しいなぁ。不景気ってやつか。 公園のベンチで寝ている酔っ払い。彼のスーツの内ポケットから抜き取った財布から、万札を一枚だけ取り出し、財布を元の場所に戻してやる。 こうすると、相手は酔っている間に使ったのかと思い、被害に気付かないことが多いのだ。 僕は、いつでもそうして生活費を仕入れている。家には帰れないからほぼ毎食弁当で、銭湯にも行くため、節制しても一週間ほどで一万円を使いきってしまう。 ゴミ箱を漁るような生活をする気はさらさらない。文化人として、ゴミ箱漁りと、破れたパンツをはくことだけはしたくなかった。……まぁ、そもそもパンツを破れるまではいたことすらないのだが。 段ボールでマイホームを作ることは、ゴミ箱漁り以上に必要なかった。 僕の通うスーパー銭湯は、一晩中営業していて、しかも、休憩スペースたるものが設けられているため、そこで寝泊まりすることさえ出来るのだ。
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