第三章 出会い

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僕は、自分の過去について目の前にいる元クラスメートに説明した。僕の事情なんかとっくに知っているくせに白々しく驚いてみせる彼が、少し憎く感じた。 「そっか……悪いこと聞いたかな」 「別に気にしてないよ。知らなかったのならしょうがないし」 あえて『知らなかった』の部分を強調する。予想通り少しだけ焦った表情を見せた彼に、幾分スッキリしたが、過去の傷口を抉られた怒りはその程度では到底おさまらなかった。 「まぁ、あれだ。辛かったとは思うけど、生きてりゃいいことあるって」 意味の分からない慰めのような言葉を投げかけてくる彼が、とても滑稽で不愉快だった。 「そうだね、ありがとう。でもやっぱり親は大切にしなきゃ駄目だよね、僕みたいにいついなくなるか分からないんだから。特に、塾に行くっていいながらさぼってさらに月謝をナンパした女の子に使い込んだりなんかしたら、凄く悲しむだろうね」 僕のその言葉に、彼は口を半開きにして、今度は本当に驚いていた。何か言おうとしていたが、僕はそれより先に「じゃあ用事があるから」と言って彼に背を向けた。 『あいつ、なんで知ってるんだよ! 見てたのか……いや、それにしても俺が月謝を使ったことなんか知るわけないし、もしかしてもう母さんにバレてる……?』 中学時代の人気者の混乱した思考は、周囲の喧騒に掻き消されていった。
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