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僕は、ゲームセンターに足を向けた。僕のような不適応者にはぴったりだ、などと思うこともある。……それに、あの喧騒の中でなら、何も考えずにいられる。
夜の街は、遅くまで騒がしい。汚い大人たちが、うるさい。
そう思いながら、通りの端を、肩を竦めて歩いていた。
色々な人とすれ違った。残業帰りのサラリーマン、酔っ払ったOL、ナンパ待ちの女子高生、段ボールハウスに住むじいさん。あと、なんだか無駄にゴージャスな服装の、セレブっぽい女性……。
セレブっぽい女性が視界に入った瞬間から、僕は彼女の背後にいる男の気配に気をとられていた。
背筋に悪寒が走った。
腰を振って歩く女性の背を睨みながら、足音をひそめて後をつける男。
遠くから見た時は、ただの引ったくりだろうと思い、さして気にも留めなかったが、その男の狙いはそんな生易しいものではないと、即座に理解した。
セレブっぽい女性とすれ違いかけた時、僕は彼女の手首を掴み、
踵を返して、彼女を引っ張りながら走り出した。
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