第一章 セレブっぽい女性

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僕は、ゲームセンターに足を向けた。僕のような不適応者にはぴったりだ、などと思うこともある。……それに、あの喧騒の中でなら、何も考えずにいられる。 夜の街は、遅くまで騒がしい。汚い大人たちが、うるさい。 そう思いながら、通りの端を、肩を竦めて歩いていた。 色々な人とすれ違った。残業帰りのサラリーマン、酔っ払ったOL、ナンパ待ちの女子高生、段ボールハウスに住むじいさん。あと、なんだか無駄にゴージャスな服装の、セレブっぽい女性……。 セレブっぽい女性が視界に入った瞬間から、僕は彼女の背後にいる男の気配に気をとられていた。 背筋に悪寒が走った。 腰を振って歩く女性の背を睨みながら、足音をひそめて後をつける男。 遠くから見た時は、ただの引ったくりだろうと思い、さして気にも留めなかったが、その男の狙いはそんな生易しいものではないと、即座に理解した。 セレブっぽい女性とすれ違いかけた時、僕は彼女の手首を掴み、 踵を返して、彼女を引っ張りながら走り出した。  
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