癒えない病

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― 地下街 東区  ― 中央区から散開した後、東区に到着したシグマ、フロルの二人、彼等は到着後、息を付く間もなく乱戦に巻き込まれていた 運が良いのか悪いのか、東区が一番異形の発生数が多いが、気性の荒い戦士達が集う為に戦闘に参加する者も他地区とは比べ物にならない程多くいた 戦力が多いのは有り難いが、いかんせん人混みで見通しは悪い 「大丈夫か、フロル」 剣と怒号の行き交う戦場、後方支援するフロルにシグマは声を掛ける、サイスブレイドの横凪ぎで目の前の二体の異形を一息に両断すると、地面にぶつ切りの肢体が転がり、一体ずつ頭を潰して無力化した 「……なんとか、」 フロルは一言だけ返した、彼女は対アモン戦で人型の悪魔との戦闘経験もある、人の形を色濃く残した異形でも気をやらずに戦えている しかし、慣れた手つきの父親と違い、いまいち実力を出しきれずにいた 後方支援とは言ってもシグマから3m以内の近距離、しかも絶えず他の戦士達が回りで戦っている為に位置取りにも気を使う、思わぬタイミングで身体がぶつかることもしばしばだ 一方でシグマはひらひらと身軽に避けていた、手持ちの巨大な鎌剣も攻撃対象以外を全く傷つけてない 父親との立ち回りの違いと、行動制限に苛立っていると 「フロル、あれに魔弾だ」 シグマが不意に声をかけた、意識を戦いに再び集中させると彼の見る方向に異形がいた、戦士の一人を捕まえ、頭から喰らっている 不運な事に餌食となった戦士は一思いに殺されていない、ヤスリ状に細かい歯の生えた長い舌でこめかみから頭皮を削られている最中だった、既に幾人か捕食した様で表情に余裕が見える、事実、阻止しようと他の戦士達が斬りかかるも高質化してきた筋肉に苦戦していた 一度、筋肉が高質化するまで捕食すれば、後は食べている最中に攻撃を受けてもたちまち回復する、そのため異形は周囲に恐怖感を与えるようにあえて味わい苦しむ方法で咀嚼しているのだろう 捕食されている戦士は屈強な肉体を持つ大柄な体格、武器は鈍器の様に重厚な斧 しかし斧は手から離れ、地面に落ち 渾身の力も拘束を解くに至らず、歯が数本割れるほど喰い縛り、目を血走らせて頭を削られる痛みに泡を吹きながら耐えている 凄惨な様相に吐き気がするも、堪えて視線をそらさない 「ごめん、今助ける!……」 フロルは左腕に装着した【魔術師の盾】を構える、シフから貰った武器であるこれは盾に魔力を込めれば開いた穴より刃を精製出来ると言う物だが、盾の特性を学ぶことにより新しい使用法が可能となっていた
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