雹国の剣士

26/35
前へ
/690ページ
次へ
1bfda6b6-8e6c-4ab5-878c-82cc10d7af59剣の開放、それ即ち“素材となった生物そのものの力を発揮する”事、鳳凰翼の素材フリオキスは絶対零度の体を持ち、生み出す氷は常温では溶けず半永久的にその形を保つ、 力を開放するとすぐに使い魔が距離を置き、そして主の前に立った、つくづく優秀な使い魔だ、シフの凶刃を前に主を守ろうとしている しかし、二人同時に攻撃する二度とないチャンスである、すかさず彼は技を放った 「雹降螺旋破っ!!」 技の名を口にした瞬間シフの足下を中心に円を描くように草原全体が凍土と化す、悪魔も、その使い魔の彼女も膝辺り迄凍りつき動きを封じられた 紅い瞳が動揺し、また眉をしかめる この技がもたらす超低温が目の粘膜をも凍らせたのだ、視界は塞がれて、まんべん無く草原の地より20m程の高さに配置された氷柱に気付く事もない 視界の回復を待つこと無く槍の雨は無慈悲に降った、氷柱一つの大きさが長さ5メートル、半径50センチの鋭利な円錐で、それらの間隔は2mmもなく、 発動した時、“氷だけの世界”になったような感覚に陥るこの技は、シフの頭上にも氷が落ちるが、接触する前に魔力として吸収される、回避不能、防御不能、一連の流れは5秒程、使用した場合相手の死は確約された様なものだが、今は決してそう言い切れない 激しい地響きと共に、飛び散る氷の大きな破片と冷気で辺りは霧に包まれた、幾千、幾万の鋭利な槍が頭上から降って来るのだ、本来は人型サイズに使う技ではない、対大型の化け物用である 呆気なく死ぬとも思えないが、願わくば死んでいてくれ しかし思いを裏切る形ですぐに声は聞こえてきた 「惜しいっ、非常に惜しい、もう少しだったな」 そうは言っても声色に危機感はない 「……やり損なった…か、やっぱり強いなお前」 済ました顔で霧から姿を現す少年、強がりを言ってはみたがあの技をどうやってとの疑問が頭に響く
/690ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2086人が本棚に入れています
本棚に追加