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山肌を縫って風が吹く
散らばった氷の破片は強力な冷気を放っている、濃く霧がかかっているため視界は零、技の特徴は二つある、一つ目は技の一連の流れ、二つ目は放った後のこの状況だ
視界は無くなり、切れ味がカミソリ並に鋭利な氷片が技の効果範囲一面に大小ばらまかれる、気温は瞬く間に落ち込み、氷片でついた傷から寒さによって壊死していく
ピュー、ピューと不規則に口笛の様な音が鳴る、しばらく風が吹くと見渡せる程度には霧が晴れた、見ると少年は服が破れ、体をずたぼろに負傷しているものの五体満足、挽き肉どころか手足の一つも欠けてない
「………痛みを…感じないのか」
思わずシフが呟く、人型を保てる程“ぬるい技ではないし、低い威力でもない”しかも、全身全霊を込めて放ったのだ、負傷させる事は出来ても、依然として立ち上がっているその姿は彼の予想を遥かに上回っていた
バケツで赤ペンキを頭からぶちまけた様に血塗れだが、それだけに口角を上げてにやける口がやたら目についた
目眩がする
余裕、危機感の無さ
あまりの得たいの知れない存在だ、技を放ってから強い頭痛がしてきている
「いや、痛いよ………けどな、この痛みが気持ち良いんだ、生きている実感が湧くからよ」
何を言っているんだ、と、シフは少し後ずさりした、少年は尚も話を続ける
「俺が見るに君は鳳凰翼を使いこなせて無い、威力は確かに強力だ、俺が今まで受けた攻撃でもこれはトップクラスに効くし本当に痛い、でもな、これは“フリオキスそのものの力であり、君の力ではないな”」
何を言い出すかと思えば、シフが“この剣を使いこなせてない”と言うこと、
シフは否定する、頭の中で、
〝そんな事が…有る…訳…な……い………ぅ〟
あ、頭が、痛い、
しかし、その否定を掻き消すように、そして反発するように“頭痛”が激しくなっていった
「ほら、使いこなせて無い、……武器と分かり合えないから、生き物を使用した武器なら尚更な」
「武…器と、分かり……合うだ、と」
「そうだ、“心を通わす”、じゃないと今の君みたく使用者が痛い目を見る事になるから………」
身体が寒い、意識が遠のき、頭痛も酷くなる、
〝……これは………まさか〟
景色が二重に見えた瞬間、シフに変化が起こった
「ぐぅぅう"ぅ"おぉあぁあ"っ!!があ"あ"あ"ぁあ!!?」
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