雹国の剣士

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〝俺は……〟 目の前が真っ白な光に包まれている ここは………どこだ 確か俺は戦って………… そうだ!俺はっ シフは即座に体を起こした どうやら気絶していたらしく、目が覚めると、あの少年の座っていた岩にもたれかかっていた 頭が割れたかのように激しかった頭痛は、今は嘘のように消え失せている 「あ………あいつは…………」 周りを見回しても誰も居らず雲の上のような光景が広がっている、みれば自分の回りだけ氷が切り取られて土の上だった ただ優しい風が草を揺らし、頬を撫でてくるだけである 「あはは、心配しなくても居るぞ」 岩の上から声がした、見上げると丁度頭上に少年の足と、使い魔の長いスカート見えた、少し間を置き、シフは呟く、 「…惨敗……か」 そうだ、まさしくそれだ、調子に乗り、軽々しく戦いに身を投じてしまった、認めるしか、受け止めるしかない、 “剣の暴走”、シフは力を制御しきれず、逆に剣に飲まれる結果となってしまった、運が良かったのか生きている、命があるだけでも儲けものだが 「……何故トドメを刺さなかった、俺はお前を殺しに来たんだぜ、みすみす敵を生かす悪魔なんて見た事も聞いた事もねぇよ」 彼は問う、が、少年から答えは返ってこない、 「……………スゥー、…………スゥー、………」 暫く間を置き、静かな寝息が聞こえた、 〝……寝てる………一体何なんだ、こいつは〟
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