雹国の剣士

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聖魔暦2090 雹国ニブルヘイム 「よし……と…」 一年を通し厳しい寒さが続く国【ニブルヘイム】 大自然の冷たさは命さえ脅かし、名の通り頻繁に雹の降る変わった気象の土地にある国だ、しかし、その冷たい気候と反し、国民は互いに守り合い、支え合って暖かく暮らす風土が出来ていた 例に漏れなく助け合いが盛んなとある街【アルペ】、ニブルヘイム領内に幾多ある街の一つであり、世界で最も北に位置する街である その離れに孤立する様、ひっそりと一件の小さな家が有った 家主である青年は外出が多く、普段は空き家ではないのかと言えるほど静かな家である しかし、この日はやけに騒々しかった なぜなら、そこに住む青年【シフ ウィンストウ】が前々からギルドより受け持っていた仕事を全て終え、旅支度をしている最中であるからだ 予想外に荷物が多く、彼は持ち物の選択に悩んでいた、気候の安定しないこの雹国に飛行艇の飛び交うターミナルはない為、空路は利用出来ず徒歩になる、加えて最寄りの船着き場さえ日を跨がねばたどり着けない距離にある 魔石という電気、燃料を凌ぐこの世界の最もポピュラーなエネルギーを使用した乗り物も無く、獣の引く雪車を利用すれど移動時間は徒歩と大差ない、そのため必然的に野宿をする準備等も必要だった、テントや魔除けの護符などの必要性を考え、もっていく物を挙げ始めるとキリがない そして詰め込み続ける内に気付くと、いつのまにやら背負いカバンが張り裂けんばかりに膨れ上がっていた、寝袋、テント等々、必然的に防寒仕様になるため厚さも重量も他国の比ではない、円柱の形であるこのカバンは大きすぎて使い勝手の悪い事から半額以下で購入した売れ残り、本人は何より強度と収納性が高いので気に入っているが、早くも製品寿命を迎えようとしている ちょっとやそっとで破れる代物ではないと店で説明は受けたため、中身を別カバンに分けるといった発想は生まれず、長旅のプランを考えると足を引っ張る重量なのだが、それも特に気にならなかった為、彼はそのカバンを背負うと、そのまま出発しようとした
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