雹国の剣士

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「雹国、確かに俺はニブルヘイム出身だが、剣士なんて山程いるし………本当に俺なのか」 「さぁね、まぁ勘だから、けど俺、見る目はあるよ」 使い魔の膝元にもたれヘラヘラ笑っているその顔からして、話の信用度はシフ的に0である、どことなくうさん臭いオーラが出ており、何より根拠もない しかし、その少年の紅い瞳は確信めいた光を宿し、自身の行動を寸分も間違えてはいないと思っているようにとれた しばらくあーだこうだと話している内に体力も割と回復したので、シフは宿に戻る事にする、依頼に失敗したので、宿には普通に泊めて貰うしかないだろう 「俺はもう帰る、討伐依頼も失敗だし…………あんたも強い奴に会わない内に逃げる事だな」 「え、帰るの?じゃ俺もついてくわ」 「…………はぁ?」 国についたら間違い無く殺られるぞ、と、シフがその少年に言う、無論この強さならば大半は返り討ちだろうし、その気になれば国対個人で戦争も可能かもしれないが、冒険者の中にはシフよりも強い者がいることだろう、見逃された手前、念のために忠告したのだ しかしそんな気遣いも他所に、殺られる理由が無い、と、彼は気の抜けた顔で言った、何故ならこの少年が宿屋パブロの店長に金を払い、神国ギルドの依頼と偽って、偽造の依頼を作ったからだそうだ “どの宿にシフが寄るか”等もヒントの様な形で予言の内に含まれていたらしい この少年が宿に着くと、主人によって依頼の貼り紙はすぐに燃やされるので大丈夫との事だ 気はのらないが、シフはとりあえず少年と一緒に帰ることにした、少年の名は【シグマ】と言い、戦闘の空気が解けた今、気付かぬ内にシフは警戒心も緩め、歩調を合わせていた
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