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宿屋パブロ
店に入ると、いの一番にシグマは主人の元へ向かう
「ただいま、………さっそくだけど」
「あぁよ、すぐに燃やすわい」
言うと、主人は手近にある火のともったアロマキャンドルに手を伸ばし、シグマの目の前ですぐに依頼書を燃やした
「依頼は燃したし……………ところでご主人」
シグマの次にシフが口を開くと、主人はそれを手で制し、首をゆっくり横に振る
「言わんでもええよ、牛舎も部屋も使いなせぇや、まぁ…少しばかり値は張るがの」
笑いながら言う店主にシフは礼を言い、少し高めの宿代を支払う、高めと言っても牛舎のレンタル代と宿泊費を合わせた、金額的に妥当なものである
宿屋の主人が最初、宿泊を拒んだのは依頼を受けさせる為の芝居だろう、今考えると粗があり、色々と無理があるため、彼は一人苦笑いした
借りた二階の部屋に上がろうと、シフは階段を上り始める、手すりに手をかけたと同時に、フロルが丁度降りて来た
「…シフ…おかえ…り…………あ、」
彼女は少しハッとした感じに目を開き、階段をゆっくり降り始める、見ているとカウンターで早速ラム酒を飲んでるシグマに歩み寄っていった
〝フロルの奴、どうしたんだ〟
シフは心の中で呟き、小首を傾げる
「…隣り…いい?…」
「どうぞ、……俺に何か用かい、お嬢さ…ん"!?」
フロルの顔を見るやいなや、シグマの様子が急に変わり、シフは足を止めて二人の様子を見た
「……久し振り……お父さん」
〝え?…えぇ………………………………………………………な゛ぁ"ぁ"!!??〟
フロルの口から出た、予想外の言葉に驚愕するシフ、二人はそんな彼を置いて話を続ける
「………ペルはまだ怒ってんの?」
シグマの口調は、どこか重い
「……お母さんもう帰って来ていいって、………お父さんが秘密で作ったハーレムはもう喫茶店に改装したみたいだから」
フロルがそう言うと、シグマは安堵の溜め息をつき、机に顔を伏せる
「…喫茶店か、まぁ仕方ない…か、はぁぁあ、苦労したんだよなぁ………五十人も美女集めんの、まぁ、いいか」
〝結婚してたのか………というか、シグマよ……………お前ってやつは〟
眠気も飛び、いつの間にやら二人の話に聞き入っているシフであった
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