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ハーデス城、王の間
天井から吊り下げてある大鏡が、淡い光を放ち始める
「あら……転送鏡が光って……」
偶然、部屋の掃除をしていた一人のメイドが、手を止めてその光を見た
パッ、と魔法陣が浮かび、次いで光が強く点滅し、最初に二人が転送されてきた
上手く着地するシグマとフロル、地面から若干浮いて転送されたのは部屋の鏡が高い所に設置してあるからだろう、
「よ、ただいま、」
笑顔でシグマはメイドに言った、その隣で呆れた顔でフロルは
「……連れて帰って来たわよ…」
と呟く
「あぁ御主様!勝手に家出をされては困ります!」
「あー、ごめんなさい、……っと」
メイドにたしなめられ苦笑いするシグマ、次なる点滅が始まったので顔を上げ、そちらに目をやる
ドサッ ドッシィーン!
「ゴガァァァウ!?」
「ふおわっ!いてて、いてぇ!!踏んでる!踏んでるから!」
身体能力が下がっているためか、シフは上手く着地出来ず、加えてその上に竜が降ってきて、彼は下敷きになった、運良く竜の前脚部分だけが乗る形になり、一番重い胴体は外れたので彼は無傷で済んでいる
「……御主人様!ペットをお部屋に連れ込まれては困ります!」
「あ~~ごめんなさい、でルチルさん、ペルは」
再びたしなめられるシグマ、適当に謝り、次に妻の事を聞く、
「ペルセポネ様ならご入浴中ですが………」
「そうか……俺も入ろっと」
言うとシグマは軽い足取りで走っていった、メイドのルチルが止めようとするも、言葉が喉元まで上って来た頃には、彼は既に、今いる部屋から消えていた
「あっ!、…………、御主人様はいつまで経っても変わりませんね、フロル様」
「……ええ、呆れる程」
溜め息をつく二人、その姿をシフはじっと見ている
無論、竜の下敷きになったままだ
「…………………」
〝俺、存在感無いのかな?メイドさん気付いてねぇよ……〟
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