「チカラ」

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すると、自分達を見下ろす様に、“鉄の塊”が滞空していた、 まるで訳の分からない物体に敵意は湧かず、その奇妙な外見に呆気にとられる 目と思われる二つの穴、その奥にある光が瞬きをするように点滅した、何か言いたいのだろうかと、フォーモリアは手のひらのグレンと顔を見合わせ、首を傾げる 二人のやり取りを見ていた鉄の塊は、二人と同じ高度まで下がると、目の光を消し、おもむろに腹部らしき所を見せた 依然として、ただ呆気にとられる二人を尻目に、鉄の塊は全体に光のラインが走り 一瞬でバラバラとなった 「~~~~……~~~」 規則的に砕けた鉄片は落下せず、鉄の塊の中心部にいた“女性”の周りを浮遊している 顔の右半分を覆う仮面をつけた、金髪の女性は何かを喋っているが、全くもって聞こえない 彼女もそれに気付いたのか、眉間に若干のシワを寄せながら、自分の耳に指を当てて見せてきた 「~~~~~?」 唇の動きを見てみる 聞こえるか?、と言っているらしい 確認の為に声を出してみて、ようやく二人は“自身の耳が聞こえて無い”ことに気付く どうやら、波の音が聞こえ続けているものだと思い込んでいた様だ 少し間を置き、耳が聞こえるようになったのを確認した後、グレンが口を開いた 「聞こえる様になってきたち」 「よろしい」 腕を組み、頷く女 仮面から覗く目より、妖しげな光が漏れ出した 「私の名は【パラス アテナ】、早速だが、私はそこの“蒼い頭の男”に用がある、見れば君達は満身創痍だ、既に危ない者もいるだろう、傷の手当てをするので全員同行して貰いたい」 「よろしいか」、そう言われて断る訳にもいかず、むしろこの危機的状況で受け入れる以外に選択肢はなかった 「ありがたい、よろしくお願いします」 ゴリゴリと甲殻を鳴らし、お辞儀するフォーモリア、アテナの名を語るこの女性を、無論彼が易々とアテナ自身と信じきった訳では無い しかし、もし“そうだった場合”、礼を欠いたら“地上世界きっての大事”だ 「礼などいい、では早速行こうと思うんだが、その前に」 言うと彼女は、少し口角を上げた 「少しの間、眠るといい」
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