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一瞬で形成された手はアテナの身体を鷲掴み、虚空より現れた悪魔の顔は血走った眼を向ける
問答無用、その手に込められた力は、只の人間であれば圧力に耐えきれず、身体が破裂し、便と臓物の“混ぜ物”を撒き散らしているだろう
彼女は“鉄属性とは別の能力”が働いたために無傷だが、虚を突かれたのは事実
完全に不意打ちを食らったのだ
不意打ちを受けた自分を恥ずかしく思う一方で、やはり自ら地上に出向いて正解だった、との思いも湧いてくる
そう、もし部下の天使をこの場に向かわせていれば
・・・・・・・・
確実に失っていた
一見すればシフはただの人、しかし内に抱える怪物達は計り知れない強さを持つ、自分以外では、たとえそれが神であったとしても、大なり小なり負傷は免れなかっただろう
「……貴様は誰に向かって無礼を働いている、“この男を死なせたくなければ”大人しくしていろ【暴食】、今、この場で、“私と本気でやり合うか”」
口を開き、アテナを頭から喰らわんと牙を剥く顔に向かい、当の本人は意外な程冷静に言葉を吐いた
シフを取り巻く事情に彼女はある程度通じているため、どのような言葉を掛ければ今の事態が収束するのかも大体の予想はついている、多少威圧めいた言葉でも、“シフの死を予期させる言葉”さえあれば、戦いにまで発展しなくて済むのだ
…一呼吸置き、手の拘束が緩む
変わらず悪魔の目には殺意が伺えるが、それでも、問答無用で殺しにかかる姿勢は解かれていた
「………モシ、シフヲ殺シタラ、僕ハオ前ヲ許サナイ、絶対ニ、絶対ニ…」
徐々にシフの身体に溶け込む様に消えていく悪魔、
僕は見ているぞ、と
一言残し、ひとまずは姿を消した
彼は言葉通り姿を消したのみで、この場に存在はしており、アテナは刺さるような殺気に今も尚包まれている
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