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目を開くと、寝たきりの身体に妙な感覚が広がる
ほんのり身体は暖かい
浮いているような
沈んでいくような
押しては、引くように
脱力した身体は緩やかに揺れている
少しして、シフはこの感覚を思い出した
“海”
そう、海で泳いでいた時と、遊び疲れて眠った時の感覚
今まで三度程、足を運んだ位にしか記憶に無い、だが、太陽の光を受け、波に身を任せる心地の良さを、身体は忘れていなかったらしい
視界は霞んでおり、徐々に焦点が合ってくると、洞窟の岩肌が眼前に映った
身体を覆う不思議な感覚は尚も続いており、シフに妙な安心感の様なものを覚えさせる
「……おじゃましてます」
不意に頭上から聞こえた声は、まるで波の音の様に、耳奥で優しく響いた
仮に今、この場所が青空広がる海岸ならば、どれほど目覚めの良かったことか
惜しく思いつつも、彼は上体を起こした
「よ、激戦だったな」
目の前には、髪をツインテールに結んだフリオキスが座っていた、彼女曰わく特に理由は無いらしい
聞けば、ガルガンチュアは疲れて眠り、ハイネスは深層心里の中を飛び回っているのだとか
「そうか」
一言返事をするシフ、言い方を変えれば、彼は今、その一言しか返せない程、心に余裕がなかった
ニ、三分程放心した様にただフリオキスの顔を見ていると、彼はあることに気がついた
フリオキスと、確かもう一人、あまり聞き慣れない声が聞こえた事に
「…誰」
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