癒えない病

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「いやぁはや、なかなかどうしてやりますな、ククムヴ殿のご配慮に感謝しますよ、久しぶりに殺してくれた相手をみすみす失いたくない」 キマイラの足元に掴んだヴォルクを投げ捨て、ランスにて彼女の後方を指す、興奮は消えており、戦う素振りはない、先程とは対照的な雰囲気だ 彼女はヴォルクに目を向けず、ガルウィングの行動を注視する、ランスは後方を差したまま、動く気配はない、暫し沈黙の続く中 「お逃げなさいな」 と、ガルウィングに言われた 絡みつく様な言い方ではない、言葉がはらむ空気、優しげな口調、読み取れた意味は”期待“、ただその一つのみである 飢えが満たされ落ち着いた獅子のように穏やかな雰囲気、依然首は折れたまま明後日の方向を向いているが、不死にも思えるガルウィングに今は万に一つの勝ち目もない事が分かる 何よりも、最後に彼の発した言葉が決め手だった ”お逃げなさいな“、脳内で幾度も響く優しげな声、レベル差が大きく有りながらも自分に致命傷を負わせた相手、その相手に危機感も覚えず、期待を込めて見送る行為 能力以外の差を見せつけられ、悔しさに喰い縛りながら気絶したヴォルクの重い身体を背に担ぐ、身長差から足は引きずり、彼の武器は置いたまま、のし掛かる重量と今の自分の姿をとても情けなく思った 覚えてやがれ 胸に積もる敗北感を目に溢れさせ、彼女はそのまま中央区に向けて歩き出した 背後からは交わる刃の壮絶な音、続きを始めたらしい 早くも戦闘欲が疼き出した様で、音は徐々に熱を上げて激しくなる そしてそれに混じり、忌々しい笑い声が聞こえた クカカカカカカカ 獣の笑い声、地下街の外に魅力を見つけた歓喜の声だ 笑い声を耳にするとキマイラは走り出す、 再び襲われる可能性も有るが、何よりも敗北感が強くなれと彼女を急がせた 中央区には何人戻っているだろうか、着くまでにはどうか泣き止んでくれ 手は使わず、顔を振って涙を散らすも、まだ乾きそうになかった
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