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戦闘が始まる、いつだって“敵”は旅人の都合などお構いなしだ、
寝込みに襲いくる、
食事時に襲いくる、
別の戦いの最中に襲いくる、
しかし“卑怯”ではない、
「ニダドレは俺が貰った」
即座に剣を抜いて、シフは周りのドレイクよりも一回り大きなニダヴェリールドレイクに走って距離を詰めていく
「ふん、まぁいいだろう」
そう言ったヴォルクは、すでに背負っていた重斧を取り外し、噛みかかってきたドレイク一匹を一発で殺していた
襲う側も、また“逆の立場になる”ことも然り
つまり、いたって“平等”なのだ、戦いにルール等無く、また定めようも無いのだから
ドレイクの胸から上は粉々に飛び散り、元の形も分からない程地面にまかれた
重斧に切れ味のいい物はほとんどない、しかし斧頭の重量に物を言わせた遠心力、そこから生まれる破壊力は同じ重量でもそれが剣なら再現は出来ないだろう
「っ…おっと」
シフがヴォルクの方を少し見ていたらニダヴェリールドレイクが爪の伸びた手を振りかざし、切り付けて来た、すかさず彼は剣の腹で受け流す
「油断するなよー」
「わかってらい、ぅらぁ!」
一旦腹に蹴りを入れ、半歩下がり、ドレイクの首筋にそっ……と、シフは剣の切っ先を滑らせて横を転がり、背後に回る
すると
霧状になった細かな血が空に高々と吹き上がった、ドレイクは視界から消えたシフを探すも、己が血の臭いで鼻は狂い、吹き止まない血で視界は無くなって
腕を振り回した後、膝をついた
〝レベル5であんな動きが出来るだと………ハーデス王の言っていた事は本当だったのか、〟
ヴォルクは思った、シグマからシフの事は一応聞いている、
以前から雹国最強は耳にしていたが、あまりにレベルが低すぎていたため、噂が一人歩きして生まれた話と思っていた、
だが今の動きで、ヴォルクの中でその話は信憑性を帯びる、少なくとも日常的に戦いに身を置いていなければシフの様な動きは出来ない、首を跳ねないのはレベル的に筋量が足りていないからだろう、しかし、背後に回る身体運びは体重移動を巧みに駆使した筋力に頼らないものだ
「あっ、ラルシェは」
意識が途切れて地面に倒れたドレイクを尻目に、シフはヴォルクの方へ走った
ラルシェの奴は、まともに戦えたのか?
そのことがふと彼の頭をよぎる、
「安心しなよ、残りはお姫様一人で十分だ、」
斧を担いでそう言うヴォルク
しかし心配なものは心配だ、ラルシェの方に視線を向けると、彼女は残りのドレイクに囲まれていた、いつでも襲いかかれる距離だが、ドレイク達は、“踏み込む事を躊躇っている”
「地獄の最淵より、わしと契約を結びし者、【幻妖シェイド】よ、誓いに従い我が元へ姿をあらわすのじゃ」
「そうか、ラルシェは召喚師だったな」
シフは安心して胸を撫で下ろす
ドレイクは下がり始め、ラルシェの背後に現れた“陽炎の様なモノ”はゆっくりその姿を表して来ている
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