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―7時間後、コルネカ森林前―
ドレイク戦の後も幾度か戦いがあり、ヴォルク以外はヘトヘトになりながらも森林前に到着した
日は傾いて辺りはうっすらと暗くなっており、テントを張り始めた頃にはすっかり夜になっていた
ちなみに度重なる戦闘で、シフのレベルは60にまで上昇した、数回の戦闘でこの速度のレベル上昇は、本来ならあり得ない
大きな理由とすれば、全盛期の動き、そして今まで耐えてきた苦痛、それらを記憶している脳が低レベルの肉体では痛めかねない動きを可能としているところだろうか、現状の同レベル冒険者よりも確実に戦闘力があり、やや痛覚の麻痺している身体が格上の集団との戦いも可能にしている
しかし、その自覚の無い本人は少し経験値泥棒的な気分を拭えずにいた
15分後にテントを張り終えて、皆で中に入る、ヴォルクがその巨体のため余裕で二人分のスペースを取るので鉄骨を伸ばして六人分位の広さに調節した、伸縮性の高いテントの布は、難なく鉄骨に合わせて広がる
「あぁ、疲れた」
言うとシフは座った状態のまま後ろに倒れる、身体を思う様に動かすため、レベルに合わない動きを繰り返しており、戦闘興奮の覚めた今、溜まった疲れを自覚出来たのだろう
「まぁ、俺はあいつがいなかったからそれほどでもないがな」
あぁ、キマイラのことか、と、シフはすぐにヴォルクの言う“アイツ”が誰か分かった
「……むむむ、」
一仕事終わり、雑談する二人、そんな中、ラルシェ一人は二人に顔が見えないように外を向いたまま、お腹を押さえていた
「ん、どうした、ラル…」
シフが聞いたその時、
グゥ~~ッ、
と、少女の押さえたお腹から、なんとも気の抜けた音が鳴り響いた、
「っ!!?!」
沸騰したように顔が赤くなるラルシェ、シフ達に彼女の顔は見えないが、長い耳が赤く染まっているのは隠しようもないので同じ事だ
「腹が減ったのなら言えば良いのに、まぁ確かに晩飯時だな、近場で狩りしてくる、少し待ってろ」
「……お、おう」
テントの出入り口から窮屈そうに外に出て、ヴォルクは夕食の食材を探しにいった、
「……ぷっふ、くく、」
「わ、笑うでないわ!!」
シフもラルシェと同じく腹を押さえた、
しかして、こちらは笑い転げながらである、
「いやいや、いい音だったんで、つい……あぁっはははは!、」
「う~~シフめ、」
“あれ、何だか、……………あれ”
気のせいだろうか、ラルシェの後ろにシェイドの姿が
「………ゴメっ!?あ、」
無論、彼が実際召喚していると理解した時には、すでに手遅れであった
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【転送鏡】
人の移動やアイテム倉庫に保管している物資を呼び出せるとても便利な手鏡、持ち運び用の手鏡、移動先や保管庫を登録出来る設置型の鏡と、二種類ある
使用するには手鏡と設置型の鏡を合わせ鏡にして登録する必要があり、未登録の場所にはいくことが出来ない
今回シフはハーデス城で借り受けたアイテム倉庫に置いたテントを呼び出しており、以前のように持ち運びはしていない
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