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「それでは、行って参ります」
朝の澄んだ空気に響く私の声。
重々しい威厳のある門の手前でぺこりと頭を下げれば、重力に従いはらりと揺れ落ちる黒髪。
「行ってらっしゃい、忘れ物はしてないか?」
「気をつけるんだぞ、幸村」
「はい、大丈夫です兄様。
‥では、行って参ります父様」
自分に向けられた優しい言葉に顔をあげれば、満面の笑顔で言葉を返し家を出る。
それが、私…真田幸村の毎日である。
いつもと変わらぬ朝。
いつまでも続くと信じて疑わなかった…。
平凡な日常など、小さな小石が当たれば簡単に崩れてゆくものなのだと……この時は知るよしもなかった。
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