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「おはよう、幸村」
後ろから聞こえた聞き慣れた声。
「おはよう、佐助」
振り返り笑めば、小走りに駆けて来る私よりも若干背の高い栗毛の青年。
「今日もいつも通り時間…真面目ですね~、俺あなたの遅刻したの見た事無いんですけど?」
からかう様に笑っている彼は“猿飛佐助”私の家の近くにある孤児院“たけだの森”(孤児院にしては妙な名前だが、なんでも院長のお茶目なんだとか‥)に住んでいる。
気さくで軽い性格だが案外思慮深く計算高い奴だと、この10年程付き合ってきた経験上私はそう思っている。
「いつも通り起きて準備していれば当たり前だと思うが…おかしい事なのか?」
当然だろう?そう言ってやれば佐助は、ははは…と小さく笑い。
「ほんと真面目ですね、俺なんて……―っ」
急に言葉を遮りバッと後ろを振り返る佐助、その顔はいつに無く険しいモノで‥。
「…どうした、佐助?」
私がそう問えば、怪訝そうな顔で一点を見ていた顔をこちらに向け一瞬何かを思案する素振りをみせたが、小さな溜め息の後にはいつもの彼に戻っていて…。
「いいえ、なんか悪寒がしたもんですから……鎌之助がまた悪さしたんじゃないかな~って‥」
そう言って笑う佐助の顔はいつも通り……私の見間違いだったのだろうか‥?
「…そうか、それなら小助がいるし大丈夫だろう?」
「そうでしたね、そう言えば‥まだ小助のいる時間だ」
「はははっ、ボケるのにはまだ早いんじゃないか、佐助?」
私がそうからかえば佐助は「失礼な、違いますよ」と拗ねた様につぶやく。
やはり見間違いだったのか…?
微かな疑念を胸に残したまま、私はいつも様に笑った…―。
こちらを見る一つの黒い影にも気付かぬまま……―
「見つけたぞ、真田幸村……あの時の決着つけてやるよ」
あの時の借りと共に、な……―
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