2人が本棚に入れています
本棚に追加
「何やってんだ!シロ、早く逃げろ!」
士郎に駆け寄った祥史が、その腕に手を回して立ち上げようとした。 華奢な腕に触れた指先から伝わる感覚。
士郎の震えているのが分かる。
「祥史…」
「!────ッ」
士郎の潤んだ瞳で見上げられた祥史が、少し赤くなって視線をそらした。
(…チクショー、その純情可憐風マナザシは反則だろー。あーもー)
頭の中が煩悶で埋め尽されそうになった祥史は、とりあえず咳払いをしつつ士郎に向き直った。
「オレと契約した最初の時、オレが何て言ったか覚えてるよな」
「えっ…と、山ほど契約書にサインさせられたあの時?」
「………」
香月家の人間は、欧米化なみの契約好きだ。
炊事・洗濯・果てはテレビのチャンネル争いまで契約で統括しているありさま。
だいたいウチの連中ときたら…。
と、思考が愚痴モードに突入しそうになった祥史は頭を振った。
「ともかく!オレはこう言ったんだ。『我が命尽き果てても、御身必ず守護致します。』──ってな。わかったか?オレはオマエと契約が結ばれてる限り、たとえ死んでもオマエの盾になってやる。だから……」
祥史が士郎の涙を優しく拭ってやる。
「──だから、そんなに、泣くなよ。────それと、…あんま引っ付くな…恥ずかしいから」
自分に抱きついて泣きじゃくっている士郎に、祥史は声まで真っ赤になってしまった。
『なンかオレたチ蚊帳ノ外ナ感ジ』
「まー、いーんじゃないかな。ヒトの痴話話に茶々入れると、馬に蹴られるって言うじゃない?」
『チッ、久シブりに丸カジリできルト思ッタのニ!藍空が止メナカッタら……』
完全に破壊された職員室の窓辺だったあたりに並んで、中庭を見下ろしていたタマゴと藍空が、恐ろしいばかりの闘気に気付いて振り返った時には、全てが手遅れだった。
タマゴと藍空の背後にいつの間にかハリセンを構えて立っていた祥史。
「次は、衛星軌道までスッ飛ばしてやる」
「あ・あの、目が怖いです」
「成敗!!!」
本日二打席目の神主打法。
唸りを上げてフルスイングされた劣化ウランコーティングハリセンが、タマゴを藍空もろとも弾き飛ばした。
最初のコメントを投稿しよう!