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「…んで、その悪さっぷりがオレたちの業界で話題になっちゃったんだ。本トなら今ごろ諏訪湖のモズクにされてるトコだったんだぜ」
「祥史、それいうなら藻屑だって」
コンビニで買って来たペプシを人数ぶんのグラスに注いでいた途中の士郎が祥史にツッコミを入れる。
ダイニングに置いてあった椅子では数が足りないので、座布団を敷いたフローリングに全員腰をおろしていた。
「とりあえず、シロがたまたまウチにきてくれて、それから姉ちゃんや婆ちゃんが間に入ってそっちの騒動が収まったのがつい最近だってのにさ~。したら今度はヘンな『自称・精霊』登場だもんな。オマエって本ト、ツイてないよ、シロ」
祥史に『自称・精霊』呼ばわりされた藍空が頬を膨らませた。
「だからボクは悪霊とかの類いじゃないんだってバ」
「どこの世界にペプシ一気飲みする精霊がいるってんだ!」
二人にツッコミされた藍空が頭をかく。
「それよりも、もう霊ですらないのはどういう理由?フツーにグラス手で持ってるし」
「ん?シロの言う通りだよな。…オマエ、ひょっとしてタダの変質者?」
『藍空ハ正真正銘春ワタル精霊ダ。ヘタな事言ッテ泣かセルと、マタ巨大化シチャウぞ』
藍空の説得で通常サイズに戻ったタマゴが、藍空の肩で飛び跳ねた。
「たまちゃん、大丈夫だよ。ボクはこう見えても結構打たれ強いから…」
明らかに打たれ弱い感じの藍空を見て、士郎がため息まじりに祥史のほうを見た。
(ヤバい!)
と、祥史が思ったのも束の間。
「祥史、やっぱりこの『自称・精霊』くん、どうにかしてあげられないかな?」
「あのさ…シロ。オマエのそーゆートコ嫌いじゃないけど、今回は止めといたほうがいいと思うぜ」
予感はあったが、止めるのが遅過ぎた。世話好きの性分が出て来た時の士郎は押さえようがないのだ。
「なんで?」
「説明したくなかったんだけどさ、────オレはこいつがそんじょそこらの自縛霊と違うくらいは解るよ。だいたい、ここまで現世に実体化できる霊体は滅多にいないんだぜ」
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