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元来、精霊とかいわゆる『神』に近い存在のモノがニンゲンに係わり合いを持つことはほぼ有り得ない。
というのも────。
「ようするにヒトっていうのは、──はい、祥史。アタシが教えたこと覚えてるわよね」
(いきなり女教師モードだね…)
(え?あやちゃんって、おんなきょうしなの?)
(キミ、女教師って言葉は、…知らないよね。モチロン)
とりあえず部外者認定を受けて、ほっとしている士郎と藍空をよそに、祥史は相変わらず正座のままお説教タイムに突入していた。
「え~っと、『ヒトは、地上に生きる生体で、ほんの少しの知能と火を扱う、短い寿命を与えられた霊体の器である』……だっけ?」
「そう。ニンゲンっていうものを単純に言ってしまえば、『それだけのもの』。だから、ニンゲンが自然破壊して地球がニンゲンの住めない環境になろうが、ましてや戦争して殺し合おうが、さらにはアタシに彼氏ができなかろうが、そういった『神』サマ連中には一切関係無いことなの」
「姉ちゃん、またフラれたんだ…」
「そうなのよ…沖縄のダイビングインストラクターとせっかくイイ雰囲気だったのに、ちょっと婚姻届ちらつかせたらドン引きしちゃって………って、馬鹿!」
文の折り鶴が祥史に再びヒットする。
「イテテ…。だから、結局姉ちゃん何言いたいんだよ!……あ、ごめんなさい。ホント」
正座のままずりさがった祥史が、安全地帯という名の士郎の背中に隠れた。
「まー、ようするにこういうことよ。本来接点をもたないはずの存在同士が、なんの備えも無く遭遇することは日常にとっての『異常』であり、回避すべき『危険』なの。────このくらいは、だいぶ昔にアンタに教えたはずよ」
長椅子に深くのけぞりながら、文は三人を順番に眺めた。
────士郎くんと、祥史だけでも危険なのに。これ以上予測不能な因子が揃ったら、香月家だけじゃ手に負えないわね。
かすかに眉をひそめた文は、唇を噛みつつ携帯を手に取った。
(ソードクラッシュの件もまだ片付いてないのに、防疫局に介入されるのは気が引けるけど…)
「そうどくらっしゅ…ってなんのこと?あやちゃん?」
「初対面の女子高生をちゃん付けで呼ぶな!…………アンタ、心を読んだわね?」
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