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「んふふ~。物分かりの早いコは姉ちゃん好きだな~」
にこにこ笑いながら、祥史のツムジをグリグリする。
「でもイキナリ、シロに任せるのは無理があんじゃない?」
「!…そ~ね~。んーじゃあ、祥史、アンタもここに住みなさい。これ命令ね」
水蒸気爆発を起こしそうな勢いで、祥史の顔が真っ赤になった。
「な…っ!姉ちゃん何言ってんの!この学校にいるかぎりはシロも大丈夫だから泊まりの警護はしなくてイイって……!」
あたふたしてしまった祥史の様子に、文は大笑いで答えた。
「時空間的に無害な存在といっても、『一応』『念のため』の警戒をかかさないのが、アタシたち香月流のやり方よ。まーいーじゃん。士郎くんと寝泊まりできるんだ・か・ら」
それに、と文は考える。
文は自分が立っている戦線の現在があまり芳しくない現状も良く分かっていた。
────ソードクラッシュという名の脅威。
ヒトを操り、事象を操り、そして世界の運命すらもその手にかける────。
防疫局が目くじらを立てるかもしれないが、今は一つでも使える『手駒』が文には必要だった。
鼻血でそうなレベルまで照れ照れになった祥史のとなりで、文は冷静に算盤をはじき、そして────自分を見つめる藍空を、虚な深い闇色の視線で捉えた。
──アタシが何考えてるか、今後一切読まないこと。いいわね…で、ないとキミのいるここら一帯、ウチの弟がいても士郎くんがいても、『浄化』のための『あらゆる』手段使っちゃうから……。
藍空は思わず、首を縦に振っていた。
こうして、いろいろ脅迫が行われたあげく、高校の屋上3LDKで三人と一匹の共同生活が始まることと相成ったのだった。
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