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「…と、まぁ、そーゆーわけで、炊事洗濯当番を決めたいと思います」
エプロン姿で、フライパンを片手にもった士郎が朝の開口一番宣言した。
テーブルに並ぶ結構豪華な朝食…。昔士郎は年齢を偽って、とあるホテルの厨房で働いていたことがある。
変なところが凝り性な士郎は、どこから仕入れるのか食器からテーブルクロスから食材まで、当時働いていたそのホテルで使われていた物と全く同じ物を取り揃えていた。
「シロ~おなか減ったよ~早く食わせろよ~」
「ボクも~!シロくん早く食べようよ~」
ナイフとフォークを握った手でテーブルを叩く『腹減った音頭』を続ける子ども二人に、士郎はある秘密兵器を口にした。
「『文さん呼ぶよ』」
途端『腹減った音頭』がぴたり、と止まる。
「…よろしい。あのね、休校って言っても俺は一応高校生だから勉強しなきゃいけないの。キミたちの面倒をずーっと見てるわけにもいかないの。わかるよね?」
それを聞いた祥史が、ぷくっ、と頬を膨らませた。
「なんだよ~。お世話してんのコッチじゃんかよ。ゆうべだってトイレ行くのついてってやったのにさ」
「祥史…それ外で言ったら、もうご飯作ってやんないからな」
「はいはい」
手をひらひらさせて祥史が答えると、士郎は溜め息をついて書き上げたばかりらしい、『炊事洗濯分担表』をテーブルに置いた。
「…うわ!何コレ、もう決まってんじゃん!」
「当たり前だろ?ゆうべ文さん言ってたじゃない。『しばらく安全のために共同生活しろ』ってさ。どれだけの期間一緒に暮らすか分からないんだから、細かい事もちゃんと決めておくべきだよ」
『期間不定』の一言に、祥史はちょっとたじろいでいた。
今までは、夜間は結界の中に士郎を置き祥史は自宅待機する、のが警護パターンで、24時間行動を共にするのは、はっきり言えば警護対象の危険レベルがかなり緊迫している状態を示す。
まぁ、別に護衛が始まった頃ならまだ良かったんだケドな~。
いつもは立てている前髪で目許を隠している祥史。
眩しい朝の白い輝きの下だと、寝不足のクマがはっきり見られてしまうのを、祥史は内心ドギマギしながらおそれていた。
(…いくらなんでも、枕並べて寝るのはな~。…理性保ちそうにないよ。まったく…)
「りせい?」
「だっ…ッ!だから心読むの禁止ッつったろーが!馬鹿ポチ!」
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