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「ん…どうだろう。俺は祥史や文さんみたくそっちのことは詳しくないから」
「シロ。お前にしか分からないことなんだ。だってお前は、あのソードクラッシュに浸蝕されて生き残った唯一のニンゲンなんだから」
祥史の頬を拭いていた士郎の手が止まり、そして、かすかに震える。
そう。
かつて士郎は、『ソードクラッシュ』と呼称される怪異に、精神の全てを乗っとられていた。
ネット上で起こしたほとんどの事件が士郎の精神を汚染した『ソードクラッシュ』の仕業であったと認知されたのは、つい最近の事。
助けを求めて来た士郎を任された祥史に、最初与えられていた任務は、『犯罪者としての監視』を士郎に対して行うことだったのだ。
「シロがオレの家に来た時は、ソードクラッシュのカケラが残ってるだけだった。────でも、少なくても一年近いあいだソードクラッシュはお前の中にいたんだ。だから、シロ、ヤツを詳しく知ってるのは、お前しかいない」
言いながら、士郎よりも感情を乱しているのが、当の祥史だった。
霊か何かも分からない不完全なモノが、士郎をメチャクチャにした────。
そう考えるだけで、祥史は沸騰しそうになる自分を押さえ切れない。
どうせなら自分の手でメチャクチャに────。そう、あの白い肌を………って。
「ん?!」
祥史が気がついた時には、ポチはどこからか取り出したクレヨンでこともあろうにテーブルクロスへ口にするのもはばかられる妄想18金の世界を書き綴っていた。
祥史にとって幸運だったのは、ポチの字がとんでもなく崩れた字体だったために、祥史しか解読できないものだったことだ。
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