闇の柔らかな肌

6/10
前へ
/30ページ
次へ
 『火曜サスペンダー戦隊ゴサスペン』  数年前、TVナガーノで放映されていた『戦隊ヒーローサスペンスヒロイックファンタジー』シリーズの完結編で、放送終了後も根強いファンが多い『戦隊もの』の傑作である。  放送当時、祥史は修行の真っ最中で、学校には通っていたものの、家にいる間は血を吐くほどの荒行三昧。  TVを見る時間は当然あるわけもなく、小学生らしい遊びや楽しみも何一つ享受できないままここまで来てしまった。  士郎の護衛任務に就いてから、祥史は初めてコドモらしい時間の過ごし方を知ったのだった。  「ま…まぁ、シロがサスペンダー好きだから、シロに悪いから着てやるんだからな!じゃなきゃ、こんなコドモっぽいの誰が着るかっての」  「ヨッシーは素直じゃないなぁ」  照れる祥史をからかうポチに、士郎は祥史と同じようなエプロンを手渡した。  「ポチにはこれ、『サスペン・ビリジアン』ね」  エプロンを受け取ったポチはあからさまに嫌そーな顔。  「ええ~、ボクそんなコドモっぽいのいらないよ~」  「ポチ!テメー『ゴサスペン』馬鹿にしやがったな!」  『サスペン・バーミリオン』のエプロンを完全装着した祥史がポチの言葉に激怒した。  「『ゴサスペン』はなぁ!そもそも…」  壮大なウンチクを語り始めそうになったところで、祥史の口を士郎の手が塞いだ。  「喧嘩は片付けの後にしよっか。じゃあ、ポチは俺と食器洗い・祥史はごみ捨て。」  「ん~ッ!」  猛抗議するのは口を塞がれたままの祥史。  仕事のため、と思うようにはしているものの、できれば片時も士郎の側を離れたくない。  「大丈夫だよ。シロくんはボクに洗い物を覚えさせたいって考えてるだけだから。それに、タマちゃんも戻って来たし」  「別にオレは嫉妬とかしてるわけじゃ…!」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加