闇の柔らかな肌

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 祥文の顔がにわかに青ざめ、士郎が言葉を失う。  その丸いボディでどうやって窓を開けたかは不明だが、キッチンのシンク横にいつの間にやらタマゴが戻っていて、その表面には『満腹』の二文字とあまり原因を詮索したくない真っ赤な返り血がべったり塗られていた。  「…」  「…」  『サイきんノ若イ牡はイー物喰っテヤガルな』  タマゴは表面にその独り言文字を浮かび上がらせると、牙の並んだ口許から何かを吐き出した。  ──今のタマゴのサイズからは不釣り合いな黒いサングラス…。  『流石ニオレでも、金物は喰イ切れン。全くアノ牡とキタラじゃらじゃら余計なモンクッツケテ…』  「だ~ッ!!それ以上説明すんな!!!」  すんでのところで祥文の折り鶴ツッコミが間に合う。  士郎が危うく失神しかけるデンジャラスなストーリーが中断された…ように思えた。  「ああ!タマちゃんが食べたのって、『流刑地の住人』45歳男性・体重125キロの大物だったんだね!」  ──親切な語り部がタマゴの話を接いでくれたおかげで、士郎は祥文の背中に気を失って倒れてしまった。  「ポチ!テメー勝手に心読むなって────。…『流刑地の住人』てなんのコトだ?」  「あれ、言ってなかったっけ」  「初耳だ!」  「ボクたち北ガヴァナンドの巡検士が変異したり破壊されたりする原因になる、『汚染に毒された新しい神々』ってトコロかな?」  「…悪い、今の話半分も理解できねーんだけど」  頭の上にクエスチョンマークを飛び回らせる祥文が困惑して訊き返した。  「え~?結構分かりやすく説明したつもりなんだケド。──じゃあもっと簡単に言うとね」  「ん」  「キミたちニンゲンの敵ってこと」  『チナミに、モウこの家ノ周りスッカリ囲まれたゼ』  ポチとタマゴが言うが早いか、キッチンの窓硝子が衝撃破を受けて全て粉々に霧散した。  「テメーら言うタイミング遅すぎだろうが!!!」
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