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「祥史の野球オタトーク長くなるから、キミも早めに成仏したほうがいいよ」
相変わらず祥史にしがみついたままの士郎が、なぐさめにもならない言葉をかけると、藍空と名乗った精霊は少し頬を膨らませた。
「ボクをそこら辺の魑魅魍魎と一緒にしないで欲しいな。確かに子どものまんまで中身も外見も成長してくれないけど、こう見えても北ガヴァナンド巡検も兼任できるファン・デイトナの………って、お~い、聞いてるの?」
「すいません、聞いてませんでした」
「予想ガイはCMだけで充分です!!」
「残念!今のは『予想外犬』で~す!」
言うなりあっかんべーをした祥史は、嬌声を上げて走り始めた。
怒った藍空がその後を追いかける。
「おーい、ほどほどにしとけよ―話が先に進まなくなっから」
呆れた様子の士郎はため息をついて、追いかけっこを始めた二人のお子様の世話をどうするか考えて、軽い頭痛を覚えた。
「とりあえず文さんに連絡してみるか…」
士郎は、祥史の姉で自分と同級生であることを最近知ったばかりの香月文を呼び出そうと、制服のポケットにある携帯を取り出そうとした────。
首筋に、何かが当たった。
士郎がいぶかしみながら、背後を振り返ったその時。
校舎二階職員室が、凄まじい爆発音を上げて内側から木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「!!!」
中庭の三人が見上げる視線のその先に、コンクリート片や鉄筋の切れ端、もうもうと立ち上ぼる砂塵に包まれながら────身の丈5mほどに巨大化したタマゴが、のっそりと姿を現わした。
声を失った士郎が腰を抜かしてしまったのか、その場にしゃがみ込んでしまった。
「……なんか洒落にならない事言ってやがる」
足を止めた祥史が、再びハリセンを構える。
確かに、タマゴの表面には洒落にならない一言が浮かび上がっていた。
『オレ様オマエマルカジリ』
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