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――朝、母親の怒鳴り声で潰れてしまいそうな耳を押さえてあくびをする。 「真澄!遅刻するわよ。何でもっと早く起きてこないの!」 俺は何も答えず、シャツに手を通した。 「ちょっと!聞いてるの?」 「・・・・・・うっせーな」 「!?」 俺はブレザーをひっつかみ、家を出た。 「寒っ・・・・・・」 外はうっすらと雪が積もり、肌を刺すような冷たい空気が張り詰めていた。 歩道の脇には、何年も前に町が実施した『町に緑を増やそう運動』で植えられた木々が、カサカサと音をたてる葉を数枚だけつけて佇んでいる。
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