自分のこと

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僕と、女の子が無言で焼き鳥丼と焼き鳥、湯豆腐を見据えていると彼はバツが悪そうに、自分が食べます。と言って食べ始めた。 女の子の方はかなり酒を飲んだので、ぼんやりしながらその様子を見ていた。彼女はかなり小柄で童顔なので、20代後半になった今も中学生くらいに見える。ロリコンの方々に狙われるだろうなあと思う。 性格はサバサバしており、普段は大人しい感じに見えるが、仕事場でもかなりしっかりしている。 しかし、親に断りなく友達の家に数日間泊まったりするので、よく誘拐をされたのではないかと家族を心配させているという、困った面もある。 同僚の男が追加オーダーを平らげ終わるのを待つ間、トイレに行って帰ってくると、食べ終わった彼と女の子の様子が少しおかしかった。 そのことについてあまり気にはせずに、会計を済ませ店を出て車に乗り込んだ。 すると同僚の男は、近くの駅で降ろしてくれ。と言い出した。 2人でどこかに行くことになったのか、と思ったが降りるのは女の子だけという。 彼女は家に帰らず、このまま大阪の友達の家に泊まりに行き日曜日に帰ってくるというのである。 実は着替えもキチンと用意してきていたのだった。僕がトイレに行っている間に同僚もそのことを始めて聞かされたらしく、運転手の僕に言いにくかったので様子がおかしかったようだ。 焼き鳥屋のすぐ近くに駅があったので送ろうとすると、これまた酔っぱらっている同僚が、もうちょっと市内に近い駅まで送ってあげよう。と言い出した。自分は横に乗っているだけなので、気楽なものだ。 結局、次の駅まで行く間に、寒い中電車に乗って行くのもかわいそうに思ったので、そのまま彼女の目的地である難波まで送って行くことにした。 週末だったし、ちょっと遊び気分でそうしたのだが、後輩である彼女はかなり恐縮してしまって何度も礼を言った。 彼女を駅に降ろした帰り道、同僚と2人車中での会話は、やはり結婚の話ばかりだった。 良い人をいつまで待ってても仕方ない。電化製品と同じでタイミングを見計らってさっさと誰か決めなさい。と、延々と説得しつづけたら、家に近づくころには、あと3年以内に結婚すると決意表明していた。 ゲイで結婚できない自分と、高望みしすぎて結婚できない彼。プチ家出の女の子。一見普通に見えても、みんな様々な悩みや変わったところというのはあるんだなあ、と思う。
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