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泉が俺を「みんな」の中に引き込んで一週間ぐらい経つ。お互いの事もだいたいわかってきて、俺はもう四人の中に溶け込んでいた。下校も昼食もみんなとするようなった。
――ピピピ…ピピピ…ピ…ガチャ――
『ふわぁ…………ふぅ』
俺は大きなあくびをし、支度にかかる。
『ん……これでよしっ』
俺は軽い足取りで駅へと向かう。
(泉達と会ってからなんか学校が楽し……いやいやそんな………でも……うん、楽しいっ!)
今まで学校が楽しいと感じことは無かった。俺は自分が少しずつ変わって行くのを感じていた。
(癪だけど、泉のおかげか……………おっ)
俺は電車に乗ると、見覚えのあるアホ毛を見つけた。人が重なって見えないがあれは間違いなく泉だ。
(…後のおっさん泉にくっつき過ぎじゃないか?)
俺は直感した。すぐに近くへ行き、男の腕を掴んだ。
『おっさん…人のダチに何してんの?ま、とりあえず…………この人痴漢でーす!』
男は注目の的となり逃げられず、次の駅で駅員に連れていかれた。
『泉…大丈夫か?』
泉『うん…まったく…やんなっちゃうよ。人の体をベタベタと触ってきてさ。けいごくん、殴ってくやってもよかったのに』
『おいおい…殴るのは―――――』
気丈に振る舞う泉の体は少し震えているようだった。
『………』
俺は黙って泉の頭を撫でてやった。泉は不思議そうに見ている……
『……よしよし。怖かったんだよな…』
我慢していたものが溢れ出るように、泉は急に泣き出した。声は出さず、俺の制服に顔を押し当てて…
(あぁ、また泣かせちゃったか。…………今は泣いていてもみんなの前では笑ってるんだろうな……お前は強い子だよ)
『ほら、涙拭いて。学校行くぞ?』
『……うんっ』
俺たちは学校へと向かった。
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