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3時50分にはバスは次の、最後のSAに止まる。時間通りに運行しているから、最初のアナウンス通り、もうすぐ着くのだろう。
僕は彼女の質問に答える事は出来なかった。
彼女のように、相手の事を考えて離れるのではない。少なくとも、彼女のように公平さなど求めてはいない。
僕は自分自身が望むなら相手の幸せを壊すことだってしてしまうだろう。ただ、結果自分にとって何の解決にもならない事を考えてしまうから望まないだけだ。
恋愛の、盲目な激情の中でさえ最後に考えるのは自分のメリットなのだから、きっと僕はまともな恋愛には向いていない。
「どうでも良くなったんですよ、結局」
僕がそう言うと、彼女は
「さっき、泣いてたくせに」
と言った。
僕は、僕以外のために泣いたわけでは無い。自分に同情する人間は卑劣だ。
そんな言葉を思い出した。
「汚い、涙です」
彼女は笑った。
バスの中にSAに着いたというアナウンスが流れる。出発まで15分。
僕たちはバスを降りて、外で話をすることにした。
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