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夜行バスがターミナルを出発してから、もうどれくらいの時間が経ったのかもわからない。
僕は捨てる町の景色が後ろに流れていくのを見送った後に瞳を閉じた。
i-podから流れてくるのは、こういう時に聴きたいと思っていた曲だ。
たった独りでの旅立ちの、曲。
それは僕をうんざりとした気持ちにさせた。
ドラマチックなものなんて何も無い、告げるべき別れと詰めるべき荷物の少なさがそれを現していた。
逃げるわけじゃない。けれど進むわけでもない。
ただ、漠然とした未来がこの先にあるとして、この街で見えるそれがあまりに退屈だったというだけの事だった。
僕は出来るだけ大きな溜息を吐いて、それからこれから向かう場所について考えてみた。
曖昧な未来しか思い付かないけれど、このままではそれは退屈なものになってしまうであろう実感が湧く。
環境じゃなくて、個人が変わらなきゃいけないんだ、きっと。
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