老猫

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老猫

流れ雲よりゆっくりと 時を知らせる鐘は 仕事を忘れ 日の光は強すぎるから 静寂した夜を待つ 気まぐれに優しい 膝上を抜け出して 暗闇に放たれるは妖艶に 赤く光る眼に研ぎ澄まし牙 夜空に散らばる星屑を背に 五感に蘇る生臭い本能は 三日月に止められ 速まる鼓動が 老いた身体に伝える 朧げに月日の流れを 映し出す水鏡に浮かぶは 沼の底から 月を目指して咲く蓮の華 黒くて深い傷に 漂う香りが眠りを誘う
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