゚. 蕾 .゚

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  …中途半端。     まさに今の俺だなと思う。     「好きになったならさ、 断られるかもとか、相手が混乱するかもとか 考えんなよ。   自分の想い伝えたいんなら伝えろよ。   だってさ、そうじゃなきゃ、伝わんないじゃん。 …もし断られても、想いは伝わるだろ?   でも言わなきゃ、お前の想い伝わんねぇぜ?」     漸は静かに話し続ける。     「記憶に残るとか、残らないとか、関係なくね? 大事なのは相手を想う気持ちの強さだろ…   好きなら堂々と伝えろよ、小さくなんねぇでよ」     漸の言う通りかもしれない。   想いが届くか届かないかじゃなく、   想いを伝えるか伝えないか…     それがまず第一歩。     なのに俺は…小さな事で悩んで…   その一歩を忘れかけていた…。     「…そう…だよな。 漸、何て言ったらいいかな… あの…ありがとう…」   俺は、大切な事に気付かせてくれた漸に向かってお礼を言った。     「別にいいって! 翼には後悔してほしくねーから!」   漸はニッコリ笑った。 でも俺はその笑顔に少しだけ違和感を覚えた。     「ぜ…」   「さぁ!!早速今日告れよ!」     俺の言葉を遮って漸がそう言った。   まるで、何かを隠すように。   明らかに様子がおかしかった。     だけど、漸は「それ以上訊くな」とでも言いたげに俺の話を遮りまくる。     …だから俺は知りたかったけど、直接聞くことは出来なかった。 何故漸が…曇った笑顔を見せるのかを。         俺は少し心にもやを残しながらも、 屋上から綺麗な青空を見上げる。     まるで俺の心のもやを拭き取るかのような太陽の光が空の真ん中で輝いていた。     春…   花が咲き乱れる季節。   いつまでも閉ざしていた俺の心の「蕾」が   もうすぐ開花しようとしていた…  
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