゚. 想い .゚

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  緊張と不安、そして期待を抱えながら俺は凜と一緒に学校の校門をくぐり抜けて、   帰り道にさしかかる。 暖かい春風が、俺を応援するように吹いていた。   「凜、ゴメンな、急に」 「全然いいよ。気にしないで」     優しい凜の言葉に俺の緊張感はほぐれていく。     「ちょっと話があってさ…」   「真面目な話?」   「あぁ…かなり」     俺らはお互い苦笑した。   いつ切り出そう…     「空が綺麗…」     沈黙を破って凜が呟いた言葉に、俺も吸い込まれるように空を見上げる。     「本当だ…」   雲1つない、透き通った蒼。   俺の心も。 この空みたいに晴れたら…   凜に告白出来たら、きっと俺の心は、この空のように…   いや、この空よりも青く輝いて、晴れ渡った色に染まるだろう。     そう思うと、   凜に告白する勇気が沸いて来たんだ。   俺は決心して、凜の方を見た。     「凜…俺さ…」 「何?」     俺と凜は視線を交わし合う。     「俺…凜の事。好きだ」   風が俺らの髪を優しく揺らした。     「…い、今、翼…なん…て…」   「凜の事…好きだ」     俺はもう迷いなくそう言った。     「ぅっ…うっ…うわぁぁあっ!!!」     凜は俺の言葉に返事せず、急に泣き崩れた。     「りっ…凜!?」 「うっ…うあっ…」     あまりに突然すぎて、状況が掴めなかった。     凜… 君は何故、 泣いているんだ??     「凜…落ち着いて」   俺は戸惑いながらも凜に近付いて言葉を掛ける。   「うっ…ゴメン…翼ぁ…」    凜は涙で濡れた顔を俺に向ける。     「分かったから…どうした?」   俺は凜の涙の理由を聞いた。     「翼、…私」   凜は嗚咽を含みながら必死に俺に話しかける。     「私…人に好きって言われたの何回かあった…けど、誰も私を受け入れてくれなくてっ…   だって、…私はっ…」     凜は言葉に詰まった。   だけど懸命に俺に伝えようとしてくれてる。     涙の理由を…         そんな凜の姿に俺は苦しくなった。     まるで凜の辛さが全部俺の中に流れ込んで来るみたいだった。  
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