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「マジかよ?凜」
「…マジです」
ニッコリと凜は微笑んだ。
この花のような優しい微笑み。
少しはにかんだ明るい笑顔。
俺が好きなこの笑顔。
…本気で守りたいと思った。
たとえ凜にいつか俺の存在を忘れられるのだとしても。
きっと俺は…、凜を愛せる。
心から、愛せるはずだ。
「やっべ…」
俺はその場で腰を抜かした。
「え?翼、どしたの??大丈夫?」
間抜けな俺を見て凜は不思議そうな表情を見せる。
「はは…嬉しすぎて…力抜けた」
俺は恥ずかしさをごまかす為に苦笑した。
「ぷっ、…あははは!何それー。翼、面白いから!」
…いや、こっちは必死なんだけどね?
俺はいつまでも笑う凜を見上げて心の中でも苦笑した。
でも…。
「ほら、翼!早く立ちな」
凜は俺の腕を引っ張って立たせてくれた。
「サンキュー凜♪」
俺は凜の頭を撫でてやる。
こうして凜と笑い合えるなら。
ちょっとくらい格好悪くてもいいかな。
素の自分を見せていけばいいんだよな、とか考える。
「凜、俺が絶対…凜を守るからな」
俺は凜を優しく抱き締めて囁いた。
俺より小さい凜は、俺の腕の中で静かに頷いた。
あぁ、やっぱり。
本気なんだな、俺。
俺は改めて実感する。
「翼、ありがとう」
凜は物凄い小さな声で俺に言うと慣れない手つきで俺を抱き締め返してくれた。
…この時間を。
この優しい時間を。
この幸せな時間を。
俺はずっと守って行きたいと思ったんだ。
俺の想いの花が咲き乱れたこの瞬間。
春風がより一層盛大に吹いた。
桜の蕾ももうじき咲くだろう。
俺の想いが咲き誇ったように。
淡い恋色に自分を染めて桜ももうじき咲き誇るだろう。
そう思いながら俺は空を見上げる。
さっきよりも蒼さを増した空は、
まるで俺の心を映し出したようだった。
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