゚. 君という花 .゚

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  恥ずかしいけど、とても嬉しい…。   俺は凜と繋いだ手を離さずに校門をくぐった。     「お前らマジお似合いだなー」   漸が羨ましそうに手を繋ぐ俺らにそう言った。     「えへへ…。そうかな…」   凜が凄く幸せそうに笑っているから俺もつられて嬉しくなった。     「本当…羨ましい…」     漸が静かに呟いた。   誰にも聞こえない位小さく…   ただ俺には、ハッキリと鮮やかに漸の声が聞こえた。   そして、漸が時々見せる寂しそうな笑顔で、今も漸は笑っている。     やっぱり漸には、   何かあるんだ。     他人に触れられたくない過去が。   俺は直感で感じた。     「翼?!」   漸を凝視していた俺は急に後ろから名前を呼ばれた。   驚きに染まったその声は、俺の思考回路を遮るのには十分で。   声の主は練だった。     「練…おはよ」   俺は普通に挨拶する。 練は俺と凜の繋がれた手を見て鋭く俺を睨んだ。     「翼…ちょっとこっち来い」   この世の物とは思えない位低い声で、 練は俺に言った。     何がどうなってんだ?     「じゃあ…凜、漸、先教室行っていいから」   俺はそれだけ言い残すと、何も言わずに練の後に続いた。   俺は練に付いて行くけど、練は人を押しのけるようにしてどんどん進んで行く。   俺の方など見向きもせずに…。     「練っ…、ちょっと待てよ!」   「…」     練の様子が変だ。   いくら俺にでもそれくらいはよく分かった。     そしてやっと練が立ち止まったのは体育館裏に着いた時だった。     「練!!いい加減にしろ!」   俺は様子がおかしすぎる練に向かって声を荒らげた。     「はぁ?何言ってんの?いい加減にするのはお前の方っしょ」     聞いた事ない…   低いトーンの練の声。   俺は恐怖を感じた。     昨日までの“親友”なんて見る影もなかった。     「どういう事だよ…」 「分かんねぇの?凜と付き合うなって言ったろ?」   俺の言葉を遮り、練はそう言った。     「…は??」   「お前は凜を泣かせても平気なのかよ?!」     練は今にも殴りかかって来そうだ。  
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