゚. 君という花 .゚

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  寒くもないのに寒気がする。   震えが止まらない。   止める事が出来ない。     「くっそ…情けねぇ…」   どうしてしまったんだ?   俺…。   こんなにも弱かったのか?   その場から走り出したくなった。   逃げ出したかった。   自分の置かれた今のこの状況から。     全てをリセットして、練ともう1度笑い合いたい。     「翼?なぁ、何なの?大丈夫なわけ?」   俺の両肩を支える漸の手の力と共に漸の口調が強くなる。     「俺は大丈夫。心配かけるつもりじゃなかったんだけどね。…悪かったな」     俺は謝る事しか出来なかった。     「…何があった?」   そんな俺に違和感を抱かない方がおかしいわけで。   漸が俺を睨みながら訊く。     言えるわけない…   練に言われた言葉なんて。   練と絶交した事なんて…。     「何でもねぇよ」   俺は溜め息で言葉を濁しながら漸に言った。     「………ならいいけどよ」   いつも諦めが悪い漸が、今日は珍しく早く諦めた。   俺は…どうしてしまったんだ?   らしくない。   俺らしくない…     「翼…無理しないでね…」   凜が困ったように顔をしかめながら俺に言う。     「あぁ…分かってる…」     「無理すんなよ…」   漸も心配してくれてる。   ゴメンな。   今は言えない。   あんな変わり果てた練の話なんか、絶対したくもない。         「さ、教室行こうぜ!」   俺は自分の気持ちにフタをして、漸や凜に心配かけないように笑顔を見せた。   今は、 今だけは。     この笑顔に嘘をつかせてくれ…。     まだ凜達には真実を知られたくないから。   そんな俺の気持ちを汲み取ったかのように凜達はそれ以上何も触れずに、俺の言葉にならってくれた。     俺達は無言のまま、教室に向かった。  
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