゚. 君という花 .゚

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  昇降口で靴を履き替えて足を踏み出す度に俺の心は重くなる。     騒がしい廊下。   次第に近くなる教室。   教室に入りたくない…。   練に会うのが怖い。     そんな事を思っていても、時間という物は止められるわけもなく、俺達3人は呆気なく教室の前に到着してしまう。   教室の扉をあけようと、勇気を振り絞ってはみるものの、   やっぱり肝心な所で臆病な俺は、教室のドアをあけるというたったそれだけの動作にもいちいち戸惑いを覚えている。     「どした?翼。入んないの?」   固まる俺を見て漸が不思議そうな表情で声を掛けて来る。     「いや、入るけどさ」   俺は必死に強がってみせた。   そうでないと、さっきの事を凜と漸に嫌でも知られてしまうから。     「翼…何かあったの?様子が変だよ?」   凜の不安そうな声が聞こえる。   凜にまで心配かけている。   俺、駄目だな。   こんなに弱くちゃ凜の事守れないじゃんか。   俺の、…弱虫。     「凜、安心しろ。翼の様子がおかしいのは今日に限った事じゃねぇって」     落ち込みモードになった俺と明らかに不安そうな凜を目前にして、漸はいきなりふざけた口調で言った。     「翼はなぁ、生まれた時から頭の中ぶっ壊れてっから♪いつも様子おかしいんだぜ」   「………はい?」   何で出会って間もない漸がそんな事言えるんですかね?   そんな俺に構わず漸は話し続ける。     「翼ってばよ~、いつも考えてる事分かんないんだよね。クールなのかお笑い方面のキャラなのかサッパリ分からん。 そういう所が味噌汁の材料にピッタリなんだなぁ」     そりゃどーも。 ってそうじゃなくてさ!     「俺から言わせりゃ漸の方が意味不明だっつの」   俺は誰もが納得するであろう一言を漸に投げる。     「なるほど。さすが頭のいい人が言う事は違うねぇ」   「あの、だから意味不明なんですけど」     …漸にツッコむの、結構疲れる。   俺がそう思って呆れていた時だった。     「良かった。翼がいつも通りに戻って」     …と言う漸の声が聞こえた。   漸の方を見るとかすかに微笑んでいるのが見える。  
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