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「そうやってよく喋ってこそ翼だぜ?落ち込むなんてらしくないってーの」
漸はいきなり大人びた仕草で俺に言った。
「本当だよ、翼。…ったく、世話かけさせないでよね?」
凜も漸に続いて言う。
…俺の好きな笑顔で微笑んでくれている。
…俺。
馬鹿だ。
こんなにいい友達や、
こんなにいい恋人が、
そばにいながらにして。
何落ち込んでんだ?
何であんな事言われたのか分からないけど、練の事いつまでも引きずってたって意味ないんじゃないのか?
だって俺には。
こんなに力強くて心強い、仲間がいる。
「絶対、俺らは翼を見捨てたりしねぇよ。だから笑え!」
漸はニッコリ笑って言った。
それを見た者全員を笑顔にさせてしまうような輝く表情。
俺はそんな漸の顔に魅き込まれていた。
「漸って綺麗な顔して笑うよな」
俺は自分の気持ちを素直に表現。
「ははっ。そりゃ光栄なお言葉ですね。でも俺、男にそんな事言われても嬉しくないなー。
凜になら言われても嬉しいけどね♪」
「っておい!」
漸の衝撃ライバル的発言に俺は思わずツッコむ。
「大丈夫よ、翼。翼は林檎みたいな素敵な照れ顔があるじゃない」
「どんな褒め言葉だよ」
つーか今の褒め言葉なのか?
と、凜の言葉にもいちいち反応。
……あ。
俺、今…
凄い気持ちが軽くなってる気がする。
「凜、漸。俺今すっげー気持ち楽になった。
お前らのおかげだよ。
…ありがとな」
俺は笑顔で2人に感謝した。
練の言った言葉は辛い現実だけど。
まだ絶交という言葉にリアルさを感じられないけど。
今は、真実を知られちゃいけない。
漸にも凜にも。
2人には心配かけられない。
だから、俺は強くならなきゃいけない。
凜を守れるくらいに強く。
俺はそう思いながら、意を決して教室の扉に手をかけた。
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