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谷底に住むもの
あれ?生きてる。うつ伏せで倒れているタイトの体に、冷たい地面の感触が伝わった。痛みはあるが苦しむほどじゃない。横には疲れ果てぐったりした猫がいる。そうか。地面にぶつかる直前、風で衝撃をやわらげてくれたんだ。立ち上がって猫を優しく抱き上げる。見わたすと思った以上にだだっ広い谷だ。猫の耳がピクッと動いた。視線を感じる。後ろを振り向くと毛むくじゃらの何かが二匹、地面から顔を出していた。
「へぇ~生きてた。てか久しぶりの客だね。」としゃべった。目を凝らしてよく見る。モグラだ。大きさはこいつ(猫)と同じくらいだ。
モグ1「運がよかったね。あいつはついさっき通ったから、次に来るのはちょうど2日後あたりかな。」
「あいつ?何のこと?そんな事より猫を休ませないと。それにどうしたらこの谷を出られるか考えないと。」
モグ1「無理だよ。」
モグ2「ここは深い谷。上に行っても大きな断崖絶壁の山が、ちょうど谷から地上へとふさいでる。下に行ってもこれまた断崖絶壁の崖があって、さらに下界へと真っ逆さま。」
モグ1「それにここにはあいつがいるからね。」
「まぁ出口がない事はわかったけどあいつって何さ?」
モグ2「あいつはあいつ。名前なんてないさ。体はガサガサで谷から頭がすこし見え隠れするほどとても巨大。足が短くてデカい口が特徴的、この谷に落ちてきた君達みたいな生き物を食べて生きてる。」
「じゃあ何で君たちは無事なの?」
モグ1「僕達は地面に潜って逃げれるから。」
「なら地面から壁へとつたって地上に戻れるんじゃない?」
モグ1「それは……。」
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