3人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなに幼い頃の記憶はなかったし、
物心ついてから命の危険を感じたこともない。
母親の話は、自分とは縁遠い世界の話に聞こえた。
確かなのは
リビングに飾られている写真の中で微笑む、
やたら爽やかでやたらハンサムな男性が父親なことだけだ。
「ママってさ…面食いだったんだね」
「はる香だって!龍介くん男前じゃない。
どことなく翔(かける)に似てるし。」
はる香の母親…薫(かおる)はそう言って笑った。
「違うよ!私は龍介の優しいとこが好きなの!」
そう言って頬を膨らませながら、はる香はどこかで感じていた。
自分が父親の影を追いかけていることを。
記憶の片隅に残る、幼い自分を抱き上げた父親の、ひだまりのような笑顔。
それが龍介の中にもあるような気がして、告白を受け入れたのだ。
事実龍介は優しく、はる香にとってひだまりのような存在となった。
最初のコメントを投稿しよう!