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もう9月。篤司は今後の身の振る舞いを決めかねていた。
卒業まで約半年。時間はあまりない。
教師は高校受験の話をすすめてくる。
この学校なら、身障者への対応がしっかりしているからと、優しさという名の義務を篤司に押し付けてくる。
篤司は考えておきますと、いつも答えた。
ハナから高校になんて行く気はない。
いよいよ願書提出期限が近づいた時に、中学を出たら働くとでも言うつもりだ。
篤司は基本的に人間を信用していない。
家を出た後、まともな職に就くつもりはなかった。
もっとも、篤司にできる職種はかなり限られているだろうが。
ならば何をするのか。何をして金を稼ぎ、どうやって暮らしていくのか。
ただ家を出たいという気持ちが先行して、具体案はなかった。
早く決めなければ――
いっそ、障害者福祉施設に駆け込んでやろうか。
家にいるよりいいし、事情を話せばそれなりによくしてくれるかもしれない。
篤司は行き当たりばったりの人生プランを、幾通りも思い描いた。
そんな篤司に、人生を大きく変える出来事があった。
切迫した篤司への救いの手は天使か悪魔かわからない。
だが篤司は、自分に訪れた唯一のきっかけに身を委ねる事になる。
闇とともに――
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