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「もし俺が盗ったんじゃ無かったらどうする。身体検査でも荷物検査でもして、俺の身の潔白が証明されたら――」
威圧的な篤司の言葉はヒロの額に汗を浮かべた。
「君は俺を疑った。そしてそれを確証も無いのに口に出した時点でそれは罪だろ。どうしても俺を取り調べたいんなら賭けをしよう。
俺が財布を盗んだ犯人なら俺は財布を返し、慰謝料として10万支払う。だが俺がシロなら…
君は俺に10万支払う。対等な賭けだと思うだろ?」
ヒロは言葉を詰まらせた。自分の想像していた人物と全く異なる人種だということが判明したからだ。
篤司の差し出した条件はともかく、ヒロは篤司の物言いに腹を立てた。
今まで同い年の奴にこんな口のききかたをされた事はない。
次第にヒロの瞳が血走り始めた。
「おまえ意味がわかんねぇよ!ふざけてんのか!?」
そう言うとヒロは一気に篤司に近づき、胸ぐらを掴んだ。
それでも表情を変えない篤司。
その態度が怒りを爆発させ、ヒロは右の拳を振り上げた。
――来る。
ヒロの拳が篤司の左の頬をとらえる寸前に、背中を反り頭を引いた。
ヒロの右手は空を切る。
すかさず篤司は右の拳でヒロの腹を押し上げた。
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